「茨城県学生ビジネスプランコンテスト2018」レポート(後編)
レポート
11月23日(金?祝)に茨城大学天下足球网で行われた「茨城県学生ビジネスプランコンテスト2018」。昨年に続き2度目の開催となった今回は、中学生、高校生、大学生、高専生、大学院生から合計39プランの応募があった。この日は1次審査を通過した10組がプレゼンテーションに臨み、熱意をこめてプランを披露した。前篇?後編に分けて、ひとつずつ紹介している後篇。審査結果もあわせてお届けする。
⑦訪日外国人向け難しい日本語から"かんたんなにほんご"への翻訳サービス
茨城県工業高等専門学校1年 熊谷 愛美さん/1年 大崎 夏太さん/1年 武井 智大さん
昨今、訪日外国人や在住外国人の急増が社会的関心事となっている。しかし、日本に滞在する外国人が直面するのは、数々の公的文書で使用されている"難しい日本語"という壁。英文が併記されるケースも増えてきたが、それでは英語を理解できる人にしかメリットがない。母親がタイ人だというチーム代表の熊谷愛美さんは、難しい文書用語を簡単な日本語に置き換えることが、ときに日本語を母語としない人々にとって大きな手助けになることに気が付いた。そこで、周囲の在住外国人にも聞き取り調査し、「難しい日本語」から「かんたんなにほんご」への翻訳サービスを考案。生活に必要な公的文書の日本語変換や、役所などでの窓口対応の補助など、内容に合わせた価格を設定し、様々な言語的背景をもつ利用者の細かなニーズに応えるプランとなった。
⑧アンネのバラから作る環境ソープ
茨城キリスト教学園高等学校1年 軍地 仙梨さん/1年 永山 ティナさん/1年 阿部 友里亜さん/1年 大田原 和奏さん/1年 中原 琴音さん
「アンネのバラ」という種のバラがあることをご存知だろうか。『アンネの日記』で知られるドイツ系ユダヤ人アンネ?フランクの死後、父オットーが娘の形見として作り出したこの新種のバラは、数々の人の手を経て茨城キリスト教学園に渡り、命の尊さを教える象徴的存在として、今も学園の一角で黄金色の美しい花を咲かせている。軍地仙梨さんを代表とする本チームでは、「アンネのバラ」の花びらと廃油から石鹸を試作し、手にとる人に平和の大切さと環境保全を考えてもらう商品を開発した。会場では、今回のプレゼンを聞いて初めてこのバラの存在を知ったという参加者も多く、具体的な製造方法や量産の可能性などについて、質問が相次いだ。
⑨ボランチ(高齢者向け宅配弁当業にリスニングボランティアを合わせたもの ボランティア アット ランチ)
茨城県立多賀高等学校3年 平子 歩さん/日立市立十王中学校3年 平子 勇輝さん
サッカーでは、中盤で攻守の要となる役割を担う選手のことを、ときに「ボランチ」と呼ぶ。今回、兄弟でコンテストに参加した平子歩さんと勇輝さんは、そんなボランチになぞらえて、ともすると社会で孤立しがちな高齢者とその家族や地域を結ぶ宅配弁当サービス「ボランチ=ボランティア?アット?ランチ」を提案する。このサービスでは、「ボランチ」と位置付けられるボランティアスタッフが、高齢者へ弁当を宅配する際に生活の悩みなどを親身に聞き取り、高齢者の家族へ安否や生活の様子をつぶさに報告する。現代社会が抱える高齢者の孤立の問題に、地域に潜在するボランティア希望者の需要を結び付けたものだ。「一人暮らしの祖母を心配する気持ちから思いついた」と語る様子に、平子さんたちの真剣な想いが伝わってきた。
⑩「おいしいミュージアム 幸せ、キッチン」~茨城の地域資源を家庭で、明日の暮らしをデザインするサービスに変える~
筑波学院大学3年 西村 瑠夏さん/1年 青木 晶さん
こちらは、すでに茨城の食と筑波学院大学の図書館を融合するブックカフェの実証実験で実績のある「おいしいミュージアム」から、新規事業の提案である。これまでは地元の食材を図書館内で提供するカフェ事業が中心だったが、新たに移動式の小型ミュージアムを考案し、地域資源をミュージアムグッズとして開発、学生が作成したブックレットや図書館の蔵書の展示と合わせた新しい空間としてプロデュースした。グッズはその場で購入できる。さらに、開発したグッズとテーブルウェア等を詰め合わせた「ピクニックセット」も用意した。チームが開発した茨城のおいしい食を、ミュージアム内だけで提供するのではなく、家庭に届けて地域で楽しんでもらおうというコンセプトだ。
以上、前篇で紹介した6組とあわせて10組のプランが紹介された。審査委員長を務めた尾﨑久記 茨城大学理事?副学長は、「今回エントリーされた中では、『高齢化』『地域』『食』をテーマにIT関連の技術を取り入れたプランが多く見られ、時代を反映した企画が並んだと感じた。いずれのプランも学生たちの斬新なアイディアや社会の見方が印象深く、若い人々の豊かな発想が世の中で実現してゆくことを期待している」と講評した。
審査結果は以下のとおり。
【最優秀賞/茨城大学長賞(副賞20万円)】
訪日外国人向け難しい日本語から "かんたんなにほんご" への翻訳サービス
茨城工業高等専門学校1年 熊谷 愛美さん/1年 大崎 夏太さん/1年 武井 智大さん
【優秀賞/常陽銀行賞(副賞10万円)】
情報を着る時代へ Internet of Cloths
茨城工業高等専門学校5年 長谷川 泰斗さん/5年 斎藤 広明さん
【優秀賞/筑波銀行賞(副賞10万円)】
「おいしいミュージアム 幸せ、キッチン。」
~茨城の地域資源を家庭で、明日の暮らしをデザインするサービスに変える~
筑波学院大学3年 西村 瑠夏さん/1年 青木 晶さん
【優秀賞/茨城新聞社賞】
「藍苺(らんめい)GIRLSによる "奥久慈ブルーベリー" GAP認証農園プロジェクト」
~HIOKOファイナンスによる地域一体となった "奥久慈ブランド" 確立と茨城国体、オリンピックに向けての取り組み~
茨城県立常陸大宮高等学校3年 舘岡 藍加さん/2年 泉 紅音さん/2年 菊池 大樹さん/2年 後藤 翔さん
【優秀賞/日刊工業新聞社賞】
情報をシェアする吹奏楽の総合アプリ(サイト) 「シェア吹」
茨城大学3年 駒井 亮祐さん
なお、プレゼンテーションを行った他の5組には敢闘賞が贈られた。
また、会場ではクリッカーを使った参加者による投票も行われ、もっとも票を集めた茨城工業高等専門学校の熊谷愛美さんたちには、ダイドードリンコ株式会社からドリンク1年分が贈呈された。
社会連携センターでは、ビジネスプランコンテストへの参加者向けに実践的なセミナーやワークショップ、フォローアップ?ミーティングを開催している。学生たちが柔軟な発想で描くユニークなビジネスが実現し、社会に明るい変化をもたらすことを願う。
(取材?構成/茨城大学広報室)